東野圭吾『眠りの森』感想|バレリーナの悲しい恋

※引用はすべて講談社文庫による

目次

あらすじ

 

 美貌のバレリーナが男を殺したのは、ほんとうに正当防衛だったのか?
 完璧な踊りを求めて一途にけいこに励む高柳バレエ団のプリマたち。
 美女たちの世界に迷い込んだ男は死体になっていた。
 若き敏腕刑事・加賀恭一郎は浅岡未緒に魅かれ、事件の真相に肉薄する。
 華やかな舞台の裏の哀しいダンサーの悲恋物語。

(裏表紙)

 

 

KKc
※以下、ネタバレなしです。

 

感想

 

 『眠りの森』は『卒業』に続く「加賀恭一郎シリーズ」の第二作とされている。
 『卒業』で加賀は大学生だったが、『眠りの森』では刑事である。

 

 時間が一気に飛ぶので、つながりがわかりづらいが、各所に補足があるので読み進めるうちに理解ができる構造になっている。
 たとえばこのシーン。

 

 

 「加賀さん、恋人はいますか?」
 「今はいません」
 「今はって?」
 「古い話です。大学卒業と同時に別れた恋人がいたんです」
 (略)
 「茶道をやっている女の子で、俺も少し茶道をしていたので、その関係で親しくなったんです。
 (289頁)

 

 加賀が『卒業』のときの恋人と別れたことが、ここでわかる。

 

 また、冒頭での殺人の全貌がつかめないまま第二、第三の事件が起こることも魅力の一つだ。
 それはバレエ団の複雑な人間関係に起因している。

 

 そのため、謎が明らかになっていく過程で、バレリーナ同士の関係もはっきりしてくる。

 

 『眠りの森』は謎解きだけでなく、登場人物の悲哀や苦悩も楽しめる小説だ。

 

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名言

 

 「加賀です。加賀百万石の加賀」
 (24頁)

 

 よくドラマなんかでさ、

 プリマの座を狙って相手を陥れるなんていう臭いストーリーがあるだろ。
 だけどあんなこと、絶対にないぜ。
 (185頁)

 

 「あなたを逮捕します」
 「これでようやく罪の償いができるんですね。とても長い日々でした」
 (318頁)

 

おわりに

KKc
お読みいただきありがとうございました。

 

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